おやじ。
「今年も桜が見れそうやなぁ」
助手席から、まだ咲いていない桜並木を眺めて
親父は嬉しそうにつぶやいた。
俺は、
「毎年いうてるやん。どうせ来年もまた同じこと言うてんねやろ」
と無表情で答えた。
いや、できれば心とは裏腹に、何も感じていないふりをできたと思いたい。
今日は外泊の許可が出たのでお迎えに参上した
親父が今月から入院している。
正確には3年前から何度目かの入院で、今回はハイカムチンを打っている。
ノギテカンが正式名称だっけ?
色々な種類の薬を使い果たし、頼るものがなく
最後の薬で、これが終われば、あとは緩和しながら死を待つだけの時間。
3年予後が5%~10%と言われる病気でよく持ってくれたと思う
実際そろそろかなと感じる時もあるし、担当医の話でも切羽詰っているそうで・・・
病室のどうでもいい愚痴みたいな話を車の中でした
同じ病室にいるスタメンは
無害放屁おじさん
夜中発狂おじさん
金銭ケチおじさん
とおやじ
無害放屁おじさんは、寝ても覚めても屁をこいでいるらしい
耳障りでうるさい。
夜中発狂おじさんは、夜中に頻繁に
うぉわぁぁ!なにすんじゃおまえらぁぁぁ!と発狂し始めて錯乱を起こすのだとか
夢の中で、自分が寝ている病院のベッドのそばに黒い人が何人もきて
立って見ているらしい。病院という閉鎖空間でこの夢はこわいな。同情する。
ちなみに親父はそれを見て、自分にも何か憑いてないか不安だそうで
家に帰るときに塩振ってたけど笑
金銭ケチおじさんは
自分の命が掛っているのに、オプジーボの値段やら酸素ボンベの値段を聞いて
これなら若い女買えるでぇ、とか家買ったほうがええわ
とかイキってギャーギャー病室でうるさいとのこと。
てめーの金でほとんど払わず高額医療だろボケ。
そんなどうでもいい話をしながら帰宅。
以上、完全にチラシの裏の日記でした。
結局のところ、何もできないし何もしない。
俺自身も病んでるわけでもないしバイブスあがるわけでもない
20代前半からアラサーまで、日常はこうやって過ごしてきたから。
同年代の人が結婚とかデートをしているのを見ると
俺は今は無理かなぁ~親父も祖母の面倒もあるし、休みの日も大変だから・・・と
都合の良い、言い訳を重ねてきた。俺より大変な境遇のやつもいるのに。
俺が親父という言い訳を失ったとき、新しい言い訳を思いつくのだろうか
あ、そろそろドミノピザくるからサイドメニュー作っておこう!